産後のセックスレス 夫婦の心と体をつなぐ“ふたりの再スタート”のヒント

column

2025.10.01
  • コラム

はじめに

出産後、セックスから遠ざかったまま―。そんな悩みを抱える人は決して少なくありません。「愛情がなくなったわけじゃない。でも、心と体が“性”に向かない」。このような“産後セックスレス”は、多くの夫婦が静かに抱えているテーマです。

私自身、第一子の出産後に性への興味が薄れていく自分に戸惑いました。体調の変化、育児の疲労、仕事復帰……。
仕事では「性」を語る私も、プライベートでは性行為に消極的になっていた時期がありました。

データで見る「産後セックスレス」の現実

産後1年経っても性行為を再開していない人は約22%(※1)。
最も多いのは「産後6ヶ月〜1年」で再開するケース。
また、「二人目は欲しくない」と考えている場合、性生活が再開されないまま長期化する傾向もあります。
私のカウンセリング経験でも、妊娠中から性行為を控え、そのまま「お子さんの年齢+1年」がレス期間になるご夫婦は少なくありません。
※1 出典:月刊TENGA39号_産前産後の女性による覆面お悩み座談会

産後セックスレスの主な要因

産後セックスレスは、女性側にとって次のようなハードルが存在します。

  1. ホルモン変化による性欲の低下
    授乳期に増加する「プロラクチン」は性欲を抑制する作用があります。
  2. 心と体の“準備”が整わない
    腟の乾燥、体型の変化、出血の不安、痛みの記憶など、体にまつわる不安が壁になります。
  3. 24時間“母親モード”が抜けない
    常に「母」である自分に性的役割が見いだせなくなることも。

「夫婦の愛情曲線」に表れる育児協力の影響

この3つに加えて、パートナーの家事育児の協力度が大いに関係していると感じています。私が妊娠中に、東京都から配布された「子育てハンドブック」にパートナー男性の育児協力度が女性の愛情曲線に強く影響を与えるという見逃せないデータが掲載されていました。
パートナーが家事育児に非協力的な場合、日常的に不満やストレスが溜まって、パートナーへの愛情が目減りし、その結果、性欲減退につながることも大いにあります。

性生活の再開に必要なこと

一番大切なのは、「性生活を再開しよう」とする前に、ふたりの心理的なつながりを取り戻すことです。
夜のセックスは、昼間の関係性の延長線上にあるものだと、身をもって知ったのです。

向き合うための第一歩は「対話」

産後の性生活について話すのは、とても繊細なことです。
でも、黙ったままでは、気持ちはすれ違ったまま。少しの勇気と工夫で、心が通い合う時間を取り戻せるかもしれません。

対話のステップ:

自分の気持ちを整理する

「本当はどう思っている?」「何が不安?」性生活への積極性は夫婦でも異なります。無理に相手に合わせる必要はありませんが、自分の本音を知ることで、対話しやすくなります。

タイミングと場所を選ぶ

子どもが寝た後、ほんの数分でも落ち着ける時間を確保しましょう。疲れている深夜や、急いでいるタイミングは避けるのが理想的。

相手の話に耳を傾ける

パートナーにも、性生活への不安やプレッシャーがあるかもしれません。
「どうしたらお互いに心地よく過ごせるかな?」と、責めずに問いかけてみてください。

実践したい対話の工夫

自分を主語にすることを、I(アイ)メッセージと言います。
「なんで○○してくれないの?」ではなく、「私はこう感じてる」と伝えるだけで、相手の受け取り方は変わります。

小さな感謝を言葉にする

家事や育児を当たり前にしない。「ありがとう」の一言が関係の潤滑剤になります。
我が家では、1日の終わりに「感謝・褒めタイム」を導入しています。その日に感謝した出来事と褒め言葉をお互いに掛け合うことで、気分よく1日の終わりを迎えることができます。

自分の性欲と向き合うセルフケア

それでも、すぐに性欲が戻るわけではありません。そこで私は、自分の性的な”快”に意識を向ける時間をつくるようにしました。

●セクシュアルファンタジー(性的空想)を自由に思い描く

●潤滑ゼリーで痛みの不安を軽減する

●骨盤底筋トレーニングで産後のゆるみを回復する

●鏡を使った“ミラーワーク”で自分の体を肯定する時間をもつ

「性生活を再開する」のではなく、「自分自身と再会する」ことから始める。それが、私には合っていたように思います。

自力で改善しにくいときは、産婦人科医や助産師、カウンセラーに相談してみるのも一つの方法です。私は、産後ケアで通っていた産婦人科、助産院、鍼灸院、出産経験のある友人から産後の心身のケアと夫婦関係再構築のヒントをもらっていました。

おわりに

産後のセックスレスは、夫婦の危機ではなく、「新しい関係性を築き直すタイミング」なのだと私は思います。
お互いの心と体を尊重し合いながら、ふたりらしい距離感とペースで歩んでいく。そんな関係性を築く一歩として、今できることから始めてみませんか?

筆者紹介:OliviA(オリビア)

ラブライフアドバイザー/日本性科学会会員
2001年よりセクシュアリティやジェンダーの研究を始め、2007年から性に関する総合アドバイザーとして活動。
メディア出演、執筆、講演、カウンセリング、商品開発など幅広い分野で、「女性のセクシュアルウェルネス」や「コミュニケーションを重視した性生活のあり方」を提案している。著書は日本・台湾で出版。

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