“自分を生きる”ための性教育 | 夏休み前に考えたい、学校では教えてくれないこと
column
- コラム
目次
「月経のことは、保健体育で習った」
「避妊や性感染症についても、一応聞いたことがある」
でも
「気持ちよさについて、教わったことはありますか?」
「“嫌だ”と思ったとき、どう断ればいいか知っていますか?」
大人になっても、自分のからだや性について悩んだり、不安を感じたりするのは、知識の“空白”があるからかもしれません。日本の学校で行われる性教育には、“抜けている”大切なことが、まだまだたくさんあります。
今回は、夏休みという節目を前に、「学校では教えてくれない性教育」の話をお届けします。
性教育、あなたは何を教わってきた?
性に関するニュースが報じられるたび、「日本の性教育は遅れている」と言われます。実際、学校で習うのは「月経」「妊娠」「性感染症」など、リスク回避に特化した内容ばかり。
でも、性とは本来、もっと広く深いテーマです。
「自分の身体を知ること」「快感」「性的同意」「親密な関係性」「SNSと性のトラブル」——こうした“生きる力”につながる性教育が、まだ教えられていません。その“抜け落ちた部分”が、今も多くの大人の中に空白として残っています。
学校では教えてくれない3つのこと
1.快感を知ること=生きる喜びを知ること
「性=危険」ではなく、「性=つながり、安心、喜び」でもある。
気持ちよさや親密さを知ることは、安心感や自己肯定感にもつながります。
2025年6月に参加した日本性科学会の研修では、女性の快感を支える身体構造が教科書に書かれていない現状、思春期男子のマスターベーション習慣が将来の機能障害につながる可能性といった“教科書に載っていない課題”が議論されました。
世界性の健康学会でも注目されている「プレジャー・インクルーシブ(快感を含む)な性教育」は、まさにこの空白を埋めるアプローチです。
2.「NO」と言える力は、自分を守り、相手を尊重する
「嫌だけど、断れなかった」
「断ったら嫌われるかもと思った」
そんな経験はありませんか?
“NO”と言う力は、自分を守るだけでなく、他者との境界線を大切にする力でもあります。近年、文科省の「生命(いのち)の安全教育」教材では性暴力の予防も取り入れられつつありますが、まだ十分に届いていません。
3. セルフプレジャーについて
セルフプレジャーは恥ずかしいことではなく、「自分の身体に責任を持つ」ことの表現です。
大人向けメディアではポジティブに語られるようになってきましたが、子どもにとってはまだ“禁止”や“後ろめたさ”の対象です。
TENGAヘルスケアが運営する10代向け性教育メディア「セイシル」では、
中学生はマスターベーション、高校生は人間関係の悩み、が多く寄せられるそうです。
「誰にも聞けないからネット検索で調べる」これが今の子どもたちの現実です。
大人から始める性教育のアップデート
「最後に性教育を受けたのは中学生のとき」そう思った人も多いのではないでしょうか?
でも、今こそアップデートのチャンスです。
大人になったからこそ、「なんで当時、快感の話がなかったんだろう?」「自分が嫌だったこと、ちゃんと話せていたかな?」といった、自分の過去のモヤモヤと向き合うことができます。

夏休み前に伝えたい、性行動のリスクと備え
冒頭で、学校での性教育ではリスク管理が中心で、性のポジティブな面を教わることがないと言いましたが、好奇心が強い子どもたちは、SNSやネットの情報に触れる機会も増え、実際に行動に移す子もいます。
特に夏休みは、性への関心が高まりやすくなる時期。だからこそ、家庭であらかじめ伝えておきたい知識があります。
リスクの例
SNSトラブル
性をにおわせる投稿から性被害に遭うケース、性的な画像を送ることによるリベンジポルノへの注意。
感染症予防
オーラルセックスでも感染する性感染症への理解。
性的同意
性交同意年齢は16歳。
「イヤと言っていい」「沈黙は同意ではない」ことを明確に。
性被害に遭ったら
すぐ信頼できる大人に相談。#8891(性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター)などの相談窓口を伝える。
避妊に失敗したら
「コンドームが外れていた」など気をつけていても予期せぬトラブルもありえます。性交後72時間以内に内服する緊急避妊薬という選択肢があることを伝える。
親子でパートナーと性の対話を始めよう

性教育の先進国とされているオランダの性教育の授業で大切にされているルールがあります。
「人の意見を決して笑ったり否定したりしない」
「相手の意見には真剣に耳を傾ける」
これは、親子やパートナー間でも大切にしたいこと。
「正解を言う」より、「一緒に考える」ことを重視して性の対話を始めてみましょう。
「恋人と友達の違いってどういうことだと思う?」
「『下着の写真を送って』 と恋人に言われたらどう感じる?」
そんな問いを会話の中にポンと置いてみると、子どもは自分の感性で語り出します。照れたり、話しにくそうにしてたら、「お友達からこんな困りごとを聞いたら、どうする?」と他人事にすると冷静に考えやすいかもしれません。
わからないことがあれば、大人も適切な対処法を調べることが大切です。
大人の“こうしなさい”より、一緒に考える姿勢が、家庭でのアップデートしていく性教育の第一歩です。
大人が変われば、子どもも変わります。
性を包み隠さず語れる大人は、子どもたちが本当に困ったときに、手を差し伸べられるようになれるのではないでしょうか?
まとめ:この夏、”性を考える”を初めてみませんか?
性教育は、自分を大切に生きるための道標になります。
大人も子どもも、「こういう時、どうする?」を一緒に語る時間があっていい。この夏、小さな一歩から始めてみませんか?
筆者紹介:OliviA(オリビア)

ラブライフアドバイザー/日本性科学会会員
2001年よりセクシュアリティやジェンダーの研究を始め、2007年から性に関する総合アドバイザーとして活動。
メディア出演、執筆、講演、カウンセリング、商品開発など幅広い分野で、「女性のセクシュアルウェルネス」や「コミュニケーションを重視した性生活のあり方」を提案している。著書は日本・台湾で出版。